Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Read 三国志(三) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 312,452 characters · 628 screens
当然、敗退した。
城中へ城中へと先を争って逃げてゆく、その小勢のなかに、玄徳のうしろ姿を見つけた呂布は、
「大耳児。待て」と、呼びかけた。
玄徳は生れつき耳が大きかった。兎耳と綽名されていた。それゆえに呂布はそう叫んだのである。
玄徳は、その声に、
「追いつかれては――」と、戦慄した。
きょうの呂布の血相では、所詮、口さきで彼の戟を避けることはできそうもない。
「逃げるに如くなし」
玄徳は、うしろも見ず、馬に鞭打った。
ところが、余りに、追迫されたので、彼が、城門の濠橋まで来てみるともう橋はあげてある。
「玄徳なるぞ、吊橋を下ろせ」
城中の兵は、彼の姿にあわてて、内から門をひらき、橋を渡したが――玄徳が急いで逃げ渡ろうとするまでに、呂布も、疾風のごとく、共に橋をこえていた。
「あれよ! 呂布が」と、味方の兵は、弓に矢をつがえたが、何分、主人の玄徳と、呂布の体がほとんど一体になってからみ合ったまま、だーっと城門内まで馳けこんでしまったので、
「もし、主人を射ては」と、手もすくんで、遂に一矢も放つことができなかった。
もちろん呂布の前には、たちまち、十騎二十騎と立ちふさがったが、彼の大戟が呼ぶ血風の虹をいよいよ壮絶にするばかりだった。