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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Read 三国志(三) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 312,452 characters · 628 screens
「君にしては、常にない勇気であるが、どうして君はそう俄に思い立たれたか」
「袁術、袁紹を不利ならしめれば、いささか恩友公孫の霊も、なぐさめ得られようかと思いまして」
「なるほど、君の信義もあるのか。袁紹は恩友のかたきでもあれば、――というわけだな。よろしい、明朝、相伴うて天子に謁し、君の望みを奏上しよう。君が赴いてくれれば予も気づよい」
翌日、朝廷に出て、曹操から右のよしを帝に達すると、帝は御涙をうかべて、玄徳を宮門まで見送られた。
玄徳は、将軍の印を腰におび、朝をさがって相府に立寄った。そして曹操から、五万の精兵と二人の大将を借りうけるや、取るものも取りあえず、許都の邸館をひき払って出発した。
「なに、劉皇叔が、許都を立ったと?」
驚いたのは、かの董承である。――董承は、十里亭まで、馬をとばして、玄徳を追いかけてきた。
玄徳は、董承にむかって、
「国舅、安んじ給え。日頃の約を忘れるわれに非ず。都を去るとも、わが心は、寸時も天子のお側を離るることなからん。ただ、かねての大事を、曹操に気どられぬよう、御身をよく慎まれよ」
と、諭して別れた。
そして彼はなお急ぎに急いで昼夜、行軍をつづけた。