Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Read 三国志(三) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 312,452 characters · 628 screens
三
「ぜひもない時勢」と、無気力なあきらめの中に自分を隠しておくことを、みな保身の術として口をむすんでいた。
董承は、そういううちに、病にかかって、日ましに容体も重り、近頃は、まったく自邸に病臥していた。
帝は、かれの病の篤い由を聞かれると、ひと事ならずお胸をいためられて、さっそく典薬寮の太医、吉平というものに命ぜられて、かれの病を勅問された。
吉平は、みことのりを奉じて、さっそく董承のやしきへ赴いた。有難いお沙汰に、一門の者ども、出迎えに立ったが、その時、吉平のまえに進んで、薬籠を捧げ持ったのは、董家の召使いの慶童という小姓であった。
三
吉平はもと洛陽の人で本草にくわしく、夙に仁徳があって、その風采は神渺たるものがあり、当代随一の名医といわれていた。
迎えに出た董一家の者にむかって、帝の優渥なる恩命を伝え、それから静かに病室へはいって、董承の容体をつまびらかに診察した。
「ご心配には及びません」
吉平は、慶童子の捧げている薬籠を取って、八味の神薬を調合せ、
「これを朝暮にさしあげてください。かならず十日のうちにお元気になりましょう」
と、いって、その日は帰った。