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らんとうばのてんにょ
卵塔場の天女
泉 鏡花
Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens
横浜の新仏が燐火にもならずに、飛んで来ている――成程、親たちの墓へ入ったんだから、不思議はありませんが、あの、青苔が蒸して、土の黒い、小さな先祖代々の石塔の影に、真新しい白い塔婆で、すっくりと立ってたのにはちょっと面食いました。――(八郎さん相撲……)と、今にも言いやしないか、と思って、ぶるぶるッとしましたよ。あれと取組むのは当分恐れます。」
――寺の帰途に、八郎が私とお悦にかく話した。――
雪女郎の柳を、欄干から見る、その袖もかかりそうな、大川べりの料亭一柳で、昼飯を済ました。
で、川通りを歩行きながら、ふと八郎の覗込んだのが、前に言った、骨董屋の飾窓だったのである。
その花瓶だが、私は陶器など一向で……質も焼も、彩色も分らない。総地の濃い藍に、桔梗、女郎花、薄は言うまでもなく、一面に秋草を描いた。その葉の透間、花の影に、墨絵の影法師で、ちらちら秋の虫のようなのを、熟と視ると、種々な露店の黒絵具である。また妙に、食ものばかり。土地がらで、鮨屋、おでんはない。飴の湯、かんとう焼、白玉焼、葛饅頭、粟の餅。……鰌を串にしたのだそうだが、蒲焼など、ひとつずつ、ただその小さな看板にだけ、売名呼名をかいて、ほんのりと赤で灯が入っていて、その灯に、草の白露が、ほろほろと浮く。