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らんとうばのてんにょ
卵塔場の天女
泉 鏡花
Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens
一
一
時雨に真青なのは蒼鬣魚の鰭である。形は小さいが、三十枚ばかりずつ幾山にも並べた、あの暗灰色の菱形の魚を、三角形に積んで、下積になったのは、軒下の石に藍を流して、上の方は、浜の砂をざらざらとそのままだから、海の底のピラミッドを影で覗く鮮さがある。この深秘らしい謎の魚を、事ともしない、魚屋は偉い。
「そら、持ってけ、持ってけ。賭博場のまじないだ。みを食えば暖か暖かだ。」
と雨垂に笠も被らないで、一山ずつ十銭の附木札にして、喚いている。
やっぱり綺麗なのは小鯛である。数は少いが、これも一山ずつにして、どの店にも夥多しい。二十銭というのを、はじめは一尾の値だろうと思うと、十ウあるいは十五だから、なりは小形でもお話になる。同じ勢をつけても、鯛の方はどうやら蒼鬣魚より売手が上品に見えるのも可笑い。どの店のも声を揃えて、
「活きとるぞ、活きとるぞウ。」
この魚市場に近い、本願寺別院―末寺と称える大道場へ、山から、里から、泊りがけに参詣する爺婆が、また土産にも買って帰るらしい。
「鯛だぞ、鯛だぞ、活きとるぞ、魚は塩とは限らんわい。醤油で、ほっかりと煮て喰わっせえ、頬ぺたが落こちる。