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らんとうばのてんにょ
卵塔場の天女
泉 鏡花
Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens
十
……裃を着た、頭の大きな、おかしな侏儒ですがね。」
私は思わず後へ退った。葉は落ちつつも、柳の茂りで、滝に巻込まれる心持がした。気の迷と思ったが、実はお悦が八郎を引ぱたいた瞬間にも、舞台の端をちょこちょこと古い福助が駈けて通った。
「可厭だったら。何だい出額助。」
声とともに、颯ともつれた鬢を払って、横に提灯の柄を口に啣えると、まくり手に二つ三つ生簀を揺って、どぶんと水に浸した。鯉の刎ねる隙もない。魔のごとき大きな黒い橋杭が、揃って、並んで、どぶんどぶん、どぶんと谺を返した。
「さあ、参りましょう、お待遠様。八さんの居所は、大抵もう知れました。」……
十
「……居る、居る、居ますよ。」
提灯をフッと消す。……蝋燭の香を吸って消える、紅い唇を、そのままに、私の耳に囁いた。
八郎の菩提寺の潜門を入った、釣鐘堂の横手を、墓所へ入る破木戸で、生垣の前である。
「ほら、扉も少し開いていますわ。――先生ね、あなたね、少し離れた処で、密と様子を見ていて下さい。……後生ですから。」
「お指図通り。」
私もここは声を密めよう。
「兄さん、兄さん――」
「うーむ。」
「あんまりつい通りな返事だことね、うーむなんて。