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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Read 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 337,181 characters · 676 screens
『御家老は、はや、お目ざめでござりましょうか』
『はい、書院にひかえて、最前から、お待ち申しあげて居ります』
と、お陸が答えた。
ぴんと、弦をかけたように、三平は胸を上げた。脇差の笄をぬいて、手ばやく、四日半の乱髪を梳でつけ、又、襟元の衣服の皺を、袴の下へきちっと引きのばして、
『……お取次ぎ下さいましょう』
と、初めて云った。
奥の書院は、いつもの朝のように新鮮な夜明けの光と、静かな気勢がながれていた。しかし、膝行り入るようにそこへ通った二人の使者は、仮面のように、怖い顔をして坐っている内蔵助の顔を仰ぐと、今にも、何か大きな叱を浴びせられるような気に打たれて、はっと、心を醒ました。
内蔵助は、その顔つきの儘、
『何事も、余事は申すに及ばぬ。早駕の儀、心もとのう存ずる。それのみを、一言にて仰せられい』
『去る十四日、江戸城に於かれて、殿様、御刃傷に及ばれました。あらましは、片岡源五右衛門殿からの、この御書面にござりますが、私ども両名は、騒ぎの勃発と同時に、即刻、江戸表を発しましたゆえに、殿様、御処分のこと、その他は、さらに、後より追い早駕を以て、何人か、到着いたす筈にござります』