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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
「よし、参る」
静かに応じて騒ぐ色もなく悠然とそこへ姿を見せたのは誰でもない。これぞ問題の人竜造寺長門守です。しかも長門、犯信ゆえに栄誉ある大阪城代の職を過ったとは言え、さすがに名家の末裔、横紙破りの問題起した風雲児だけのものがあって、態度、おちつき、貫禄共に天晴れでした。恐らくは真向浴びせにすさまじい叱の声をでも浴びせかけるだろうと思われたのに、主水之介の姿を見眺めるや大きく先ず莞爾として打ち笑ったものです。
引きとって退屈男また莞爾たり!
そうしてあとがたまらなかった。片やは横紙破りの風雲児、片やはまた江戸名物の退屈男と、両々劣らぬ大立者同士のその応対が実にたまらなかったのです。
「ウフフ。そちが早乙女主水之介か」
「わッはは。お身が竜造寺どのでござったか」
「珍しい対面よ喃」
「いかにも」
「対手がそなたならば早いがよい。用は何じゃ」
「御身の謎を解きにじゃ」
「面白い! 長門の返答はこれじゃ。受けてみい!」
やにわにたぐりとってさッと繰り出したのは長槍でした。しかし、対手は傷の早乙女主水之介です。自若としながら莞爾として穂先を躱すと、静かに浴びせかけました。