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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
「竜造寺長門と言われた御身も、近頃耄碌召さったな」
「なにッ。では、どうあっても長門の秘密、嗅ぎ出さずば帰らぬと申すか!」
「元よりじゃ。横紙破りのお身が黒幕にかくれて、これだけの怪事企むからには、よもや只の酔狂ではござるまい。槍ならばこの眉間傷、胆力ならば身共も胆力、名家竜造寺の系図を以て御対手召さらば、早乙女主水之介も三河ながらの御直参を以て御手向い申すぞ。御返答いかがじゃ」
「ふうむ、そうか。さすがにそなただけのことはある喃。その言葉竜造寺長門、気に入った。よし。申してつかわそう。みなこれ天下のためじゃわ」
「なに! 何と申さるる! 近頃奇怪な申し条じゃ。承わろうぞ! 承わろうぞ! その仔細主水之介しかと承わろうぞ! 怪しき道場を構えさせ、怪しき武芸者を使うて人夫共の首斬る御政道がどこにござるか」
「ここにあるゆえ仕方がないわ。びっくり致すな。井戸掘人夫を入れて掘らしたは陥し穴じゃ。大工達に造えさせおるは釣天井じゃ。みなこれ悪僧護持院隆光めを亡き者に致す手筈じゃわ」
「なになに! 隆光とな! 護持院の隆光でござるとな! ――」
あまりの意外に主水之介の面にはさッと血の色が湧きのぼりました。