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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Read 火の扉 (ひのとびら) by 岸田 国士 (きしだくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,467 characters · 257 screens
十一
た。
まず、奥の部屋にモトムの寝る場所ができた。
「お母さん、ヒデ子ちやんはどこへ寝るの?」
「さあ、お父さまとご一緒にお座敷へやすんでいたゞきましよう」
「こつちじやいけないの?」
「こつちは狭いからねえ」
「そいじや、ぼくもお座敷へ寝るよ」
「いゝえ、あんたはこつちでいゝの」
「いやだあ、ボク……」
母親と息子とのこんな押し問答を聞きながら、市ノ瀬牧人は、ついに決心をして暇をつげた。
「あすは雨かも知れんね」
坪庭の門を締めかた/″\送つて出た夫人に、彼はそう言つた。
空のおぼろ月を二人はみあげていた。
十一
夜具の用意はそれほどなく、客を二人泊めることは無理であつた。で、彼女は、息子のそばへ今夜はもぐりこむつもりでいた。ところが、子供たち二人は、どうしてもはなれようとしないのである。
「それじや、すこしきゆうくつだけれど、お隣りへヒデ子ちやんのおふとん敷きましようか」
と、康子は、中園に笑いかけながら、譲歩した。
「お父さまのお寝間着がないけれど、兵隊流におシャツでおやすみになつてね。主人はパジャマのない時は、いつでもそうでしたのよ。和服の寝間着は、足や腕がまくれていやなんですつて……」