Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
そうもくちゅうぎょ
艸木虫魚
薄田 泣菫
Read 艸木虫魚 (そうもくちゅうぎょ) by 薄田 泣菫 (すすきだきゅうきん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,254 characters · 226 screens
2
たものだ。
秋が来ると、私がときどき菱の実を思い出すのも、ひとえにその匂をなつかしむからのことだ。
一わたり池のおもてをあちこちと見わたしても、見覚えのある菱の葉はそこらに見つからなかった。
ふと小蝦か魚かの白く水の上に跳ねあがるのが見えて、泡のつぶやきのような微かな音が聞かれた。
その瞬間、私は菱の実の殻を噛み割ったような気持を私の前歯に感じた。
2
菱の根は池の底におりて泥のなか深く入っているが、蔓は長く伸びて水の面を這いまわっている。葉柄の腫れ上った三角形の葉は、水の面が皺む度に、たよたよと揺れ動いて、少しの落つきももたない。葉と葉との間にこぼれ咲いた小さな白い花は、真夏のものとは思われないほど佗しいもので、水底からわざわざ這い上って来て、あんなに小さい質素な花で満足しているその遠慮深い小心さは、贅沢好き、濫費好きの夏の太陽から、侮蔑の苦笑をもって酬いらるるに過ぎないかも知れない。
だが、その小さな、謙遜な花から、兜虫のように、鬼のように、いかつい角を生した青黒い顔の菱の実が生れるのだ。
くろかわ
くろかわという菌がある。二、三寸あまりの黒い蓋を着て、そこらの湿地に立っている。