Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
そうもくちゅうぎょ
艸木虫魚
薄田 泣菫
Read 艸木虫魚 (そうもくちゅうぎょ) by 薄田 泣菫 (すすきだきゅうきん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,254 characters · 226 screens
に漕ぎ戻したことがあった。
河魚といえば、いずれも新鮮な生命にぴちぴちしていて、その姿をしなやかな、美しいものとのみ思って、友達のような親みをもって遊び馴れて来た私に、この古池の鯉は、彼等の持つ冷たい不気味さと憂鬱との半面を見せてくれるに十分であった。
私はその後、どうしたわけか、魚の画が好きになって、出来る限りいろんな画家のものを貪り見たことがあった。画院の待詔で、游魚の図の名手として聞え、世間から范獺子と呼ばれた范安仁をはじめ、応挙、蘆雪、崋山などの名高い作物をも見たが、その多くは軽快な魚の動作姿態と、凝滞のない水の生活の自由さとを描いたもので、あの古池の鯉が見せてくれたような、淡水に棲む老魚の持つ倦怠と、憂鬱と、暗い不気味さとは、どの作品でも味うことができなかったのを、幾らか物足らず思ったものだ。たった一度、呉霊壁のあまりすぐれた出来とも思われない作品に、あり来りのそれとはちがって、鯉を水の怪生か何かのように醜く描いてあるのを見て、おもしろいと思ったことがあった。作者はどんな人かよく知らないが、多くの画家が生命の溌溂さをのみ見ているこの魚族を取り扱うのに、彼みずからの見方に従って、グロテスクの味をたっぷりと出したのが気に入って、いまだに忘れられないでいる。