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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens
五
「それは何刻頃のことで?」
「酉刻半(七時)少し廻った時分と思いますが」
「…………」
平次は眉を顰めました。酉刻半に来た手紙というと、夕刻平次に見せたのとは違うはずです。
「どうしたことでございましょう、万一嫁の身の上にまで」
加世は自分の胸を抱くのです。武家の年寄りらしくない、飾りっ気のない愛憎を、平次はこの老女から感ずるのでした。
「ともかく、こうしちゃ居られない、行ってみましょう」
「どこへ? 親分」
「当てはないが――たぶん西久保の辺だろうよ」
老女をお静に預けたまま、平次とガラッ八は、初夏の江戸の街を、一気に西久保へ飛びました。
五
翌る日の朝、何の獲物もなく八丁堀まで引揚げた平次は(目黒川に若い女の死骸が浮いた、――若くて滅法綺麗な女だが、首を半分斬られて、茣蓙で包まれている――)と聴くと、もう一度八五郎を促して、目黒まで駆け付けたのです。
「これは大変な野次馬だ」
目黒川の土手を真っ黒に埋めた人垣を見ると、平次の義憤は燃え上がります。若くて綺麗な女の死骸と聞くと、猫も杓子も飛び出したのでしょう。
「退いた退いた、見世物じゃねえ、そんなものを見ると祟られるぞ、畜生ッ」