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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Read 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,786 characters · 278 screens
正しく武蔵の作歌と思われる歌には、
乾坤をそのまゝ庭とみるならば われは天地の外にこそ住め
がある。
いづこにも心とまらば棲みかへよ 長らへばまた本の古郷
は、上泉伊勢守の陰流の秘歌として伝わっている。
それらの剣道の極意歌なるものは、輯めれば一集になるほど各人各家にある。自分が好きなのは、柳生十兵衛の詠んだ
なか/\に人里ちかくなりにけり あまりに山の奥をたづねて
である。剣法の示唆より、幾分か十兵衛の心懐を歌ったに近いが、含味してゆかしい趣のふかい歌だと思う。
余談にわたったが――
細川幽斎の武士道いろは歌だの、当時の武士訓や壁書など見ても、社会混乱と頽廃のなかに、いかに人心は――わけて武士階級の一面には、道義精神を呼び甦えそうとしていたか、また、心ある者が、そうした時流の中にある程、自己自誡し、自己を濁流から救って、独り磨いて行こうとしたか、分ると思う。
その一端が、禅門に走り、または武者修行となって、ひたむきに、道を求めていたであろうことも考えられる。
そういう人のなかには、純粋な武者修行精神が抱かれていたろう。武蔵の如きは、真に、その一人だったと云い得る。