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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Read 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,786 characters · 278 screens
余風一喝
いうまでもなく、英田郡讃甘村は、宮本武蔵の生国の地である。故人とどういう縁故のある者の子孫かと、私は私の想像癖をまたそぞろに駆られて、一郎翁に訊ねてみると、その平尾泰助という人は、武蔵の姉が嫁いだ先の家筋の子孫だとある。歿後三百年の後にもなおまだそういう有縁があったり、余風を慕って訪れる幾多の道友や知己を持つ武蔵は、それも彼が虚空に遺した心業の威徳とはいえ、もって瞑すべきではあるまいか。私は塵一つなく箒目の立った碑前に立って眼も心も清々しかった。
余風一喝
余風といえば、武蔵の心業が日本の剣道精神を通じて、現代人の心にまで一つの大きな哲理と人生観を示唆し、隠れたる無数の武蔵崇拝者を持っている事実には、自分も朝日紙上に小説を発表した時の反響でも驚いた程であったが、今度この熊本地方を旅行してみても、しばしば、その事実を認めさせられて、今さらのように彼の孤高独行が、決して、その死後においては孤でなく独行でなかったことを知った。
ここの塚守の松尾一郎翁も、武蔵先生の事蹟についてと問えば、その細ッこい老骨の肩をそびやかしつつ、談じて飽く気色がない。
「てまいみたいな者が武蔵先生の墓のお守りを吩咐けられていることは、むしろ身に過ぎた仕事だと思っとりますんで、一生涯ここにいさしてもらうつもりでおりますが、たくさんな参詣