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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Read 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,786 characters · 278 screens
反省の彼と「独行道」の言葉
そして時には時代に逆行し、時代に抛り捨てられ、苦悶や滅失の底をずいぶんと、彷徨ったことだろうとも考えられる。
しかし、それにも訓えられて、彼の奉じる「剣」は乱世の兇器から、平和を守る愛の剣へと変って行った。権力と武力ばかりをかざす器具に、人間本能を自戒する大切な「道」をもたせた。破壊や殺戮の剣から、修身の道と心的な道味を酌んで行った。
反省の彼と「独行道」の言葉
彼以前にも、上泉信綱があるし、塚原土佐守があるし、柳生宗厳があって、すでに剣技は禅、茶、儒学、兵、治、武士訓などの日常のあらゆる生活のものを基盤にして「道」として確立しかけてはいたが、以上の三者は皆それぞれ一国一城の主や、豪族であって、身をもって世路の危難や艱苦の中を、行雲流水した人々ではなかった。
武蔵は、その点で道風の興立と達成に、選ばれて生れ出た使徒であるといってもいい。彼の生い立ちや境遇からして、約束づけられたもののように、自然に実践を重ねて行った。
武蔵以前の、上泉、塚原、柳生の三聖は、基本的な理論の発見者であり、武蔵は後輩ではあったが、身をもって実践した「道の行者」であった。
幼少からの不遇や、時勢誤認の失意や、次々の苦悩のうちから、武蔵自身も、また自己の行くべき目標を、その一路に見出して、初めて「行」