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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Read 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,786 characters · 278 screens
佩刀考 ――「武蔵正宗」と彼の佩刀
という名刀が挙げられている。
宮本武蔵が愛用した刀だというので、古来から武蔵正宗と呼ばれて来たものだそうである。勿論、相州物で、刀身二尺四寸、幅九分一厘、肉二分というから、実物は見ないが、なかなか業物らしい。
この刀の伝来の説に依ると、享保年間、徳川吉宗が将軍家の勢力をもって、諸国から銘刀を蒐めさせたことがあるが、その時、鑑刀家の本阿弥に命じて選ばせた逸品の中、第一に位する絶品が、この「武蔵正宗」であったという。
享保銘物帳にも記載されているということであるから、さだめしこの名刀は、吉宗の手にも愛されて、幕府の御刀蔵に伝わって来たものであろうが、それが岩倉家に移ったのは、維新の頃か明治になってから後か、新聞の記事で知ってふとそんなことを考えてみたりした。
文部省で認定したことだから「武蔵正宗」の説をここで問題に取り上げるのではないが、宮本武蔵ほどな男が、日頃どんな刀を身に帯びていたろうかと考えるのは、満ざら、興味のない詮索でもないかと思うので、もう少し話してみよう。
同じ頃、大阪の高島屋で、武蔵の遺墨展覧のあった折、たしか、刀はたった一腰しか出品されていなかったように思う。