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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Read 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,786 characters · 278 screens
それから戦後の行動は審かでない。竹山城の新免家の家士としてだとすると――新免家の落武者は九州へ落ちのびたり、黒田家に頼ったり、その他の地方へも分散したらしいが、もちろん徳川家の勢力地方は、努めて避けて潜んだに違いあるまい。
けれどそれは名のある重臣のことで、十七歳の一軽輩なら、どうにでも方針はつく。詮議もそこまでは届くまい。武蔵などは、そういう点で身の処置は困難でなかったろうと考えられる。
その証拠には、数年後に、京都一乗寺村の下り松で、吉岡憲法の一門と試合をしている。その時二十一歳だといわれているから、約四年の後である。
どういう素質があったか、どういう修行をしたか、この間は余程考究してみる必要がある。
一乗寺村の試合などは、あの名だたる名家の剣と一門の多勢に対して、一箇の武蔵が、ただよくそれを克服したとか、強かったとかいうのみでなく、精神的に観ても、すでに或る高い境地に近づきかけていた跡が見える。
巌流島で佐々木小次郎を打ったのが二十九歳だったという。それから三年後、元和元年の大坂陣の折には、西軍について実戦もしている。
それ以後にはまた、杳として、彼の足跡はあまり分っていない。