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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Read 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,786 characters · 278 screens
それとこんな狭隘な山間の一部なのに、古城址の多いこともまたこの地方の特徴である。竹山城を始め、比丘尼ヶ城だの、赤田城だの、堂ヶ峰城だの、正岡城だの、小淵城だの、大野五ヵ城の一つという法天山城址とか、その他、城主も地名年代も不明のものまで入れたら、この一村附近だけでも数え切れない程な古城の址だらけなのである。
その幾多の城主たちは皆、建武南北の治乱から、応仁の乱以後の地方的動乱の波及をうけ、戦国中期までの長い時代に亘って、中央の不安と共に、この山谷でも無数の小豪族と小豪族とが、征服しまた征服され、統一されまた解体され、子々孫々流血の中に生きて、限りなき治乱興亡を繰り返して来た墳墓でない物はないのである。
今それらの城主や戦蹟についていちいち記録を拾っている遑を持たないが、宮本武蔵はとにかくそういう郷土の胎土から生れているのである。そして彼の生れた天正年間は、すでにこの地方の小豪の争奪も終熄期にかかっており、竹山城の推移をそれに見ても――足利末期の山名一族と赤松一族とが鎬を削った後――赤松家の臣浦上一族が占め、その浦上が亡ぶと浮田家の所領に移り、浮田家の支配下として新免伊賀守貞重、貞宗、宗貫と三代の居城になって来たわけである。