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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Read 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,786 characters · 278 screens
料理人の生兵法
と答え、二刀を以って出雲守を追い詰め、座敷へ追いあげてしまった。
出雲守はなおも屈せず、上段より強引に撃ち下ろそうとするのを、武蔵がすかさず上に払うと、木刀は二つに折れ、一片は跳ね上がって天井板を打ち抜いた。
出雲守は初めて武蔵の非凡に舌を巻き、礼を厚くして教えを乞うたという。
料理人の生兵法
或る時、小笠原信濃守の邸に、人々の集まった折、武蔵のことが話題にのぼった。勿論、彼の兵法を誹る者は一人もなかった。
ところが、些か腕に自信を持つ一人の料理人が、これを聞いて、
「いかに天下無双の武蔵なりとも、隙を狙って欺し撃ちに致さば、よも撃てぬことはござりますまい」
と広言した。一座興じて、
「では、今宵武蔵もここへ参る筈ゆえ、見事撃ち取って見せぬか」
と、幾何かの賞金が懸けられたのである。
料理人は物蔭に隠れ、武蔵をやり過ごして置いて、微塵になれと背後から木刀を打ち下ろしたが、一瞬早く、武蔵の刀の鞘が料理人の胸元を突いていたので、
「あッ」
と、仰反って倒れてしまった。武蔵は四つ五つ峰打ちをくれて、事もなげに座敷へ通る。
やがて、水よ薬よと人々が立ち騒ぐのを聞きつけて、