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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Read 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,786 characters · 278 screens
飯粒と猫
蟻の助太刀
「何事か」
と、信濃守が尋ねる。
「只今、御前近くを騒がさんとする曲者を見かけましたれば、後日の戒めに、軽く打ち据えておきましたまでで」
と、武蔵が云った。
武蔵としては軽く打ったに違いないが、その料理人は一生不具になった揚句、よい笑われ者になった。
飯粒と猫
ある屋敷で、人に求められるまま、小姓の前髪の結び目に、一粒の米粒をつけ置き、大刀を大上段に振りかぶって、掛声もろとも、見事米粒だけ真二つに切り割って見せたという話も、武蔵のことである。
また或る時、一匹の野良猫が庭を横切ろうとした時、武蔵が室内から振向くと、猫は進退の自由を失って、その場に蹲ってしまった。居合わせた客が、不審に思って訊ねても、武蔵は笑って答えなかった。
蟻の助太刀
ある日、武蔵に会いたいという少年が来た。会って仔細を聞くと、
「父の仇討を願い出ましたるところ、幸い聴許されて、明日某所で勝負を致すことに相成りました。ついては、必勝の太刀筋を御伝授に預りとう存じます」
と、可憐な瞳を輝かせていう。
武蔵は切々たる少年の孝情に感じて、快く二刀の剣法を授け、
「明日試合に臨まば、床几に腰をおろす前に、必ず足下の地面を見よ。