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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

Read 三国志(三) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 312,452 characters · 628 screens

Aozora Bunko

「生意気をいうようですが、すこし父上のお考えと私の計画とはちがっていたようですね。私は、あの二人を留め置いて、いざという時、われわれの牙として、大事に協力させようと思っていたのに」

皆まで聞かず、陳大夫は、若い息子のことばを打消して、そっとささやいた。

「その手は巧くゆかんよ。なぜなら、いくら手なずけても、元来彼らは卑しい心性しかない。わしら父子に与すよりは、日のたつほど呂布に諂い、呂布の走狗となってゆくに違いない。さすれば却って、虎に翼を添えてやるようなものだ。呂布を殺す時の邪魔者になる……」

陳大夫はまた門を閉じて、病室に籠った。呂布から呼び迎えに来てもよほどのことでないと、めったに出てもゆかないのである。

梧桐は落ちはじめた。夏去り、秋は近くなる。

淮南の一水にも、秋色は澄み、赤い蜻蛉が、冴えた空に群れをなして舞う。

袁術皇帝は、この秋、すこぶる御気色うるわしくない。

「呂布め。裏切者どもめ」

いかにして先頃の恥をそそごうかと、おごそかな帝座に在って、時々、爪を噛んでいた。

こういう時、思い出されるのは、かつて自分の手もとにいた孫策である。

その孫策はいつのまにか、大江を隔てて呉の沃土をひろく領し、江東の小覇王といわれて、大きな存在となっているが、袁術は彼の少年頃から手もとに養っていたせいか、いつでも