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らんとうばのてんにょ

卵塔場の天女

泉 鏡花

Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens

Aozora Bunko

……内証で呼出したりなんかして、どんな三百代言が引搦まろうも知れないからね、此地は人気が悪いんだから。」

「分りました。」

ふきこぼれる鉄瓶をトンと下ろして、

「私に任せておおきなさい。」

翌朝――今朝は細君が、八時に旅店へ訪ねて来た。畳んだ風呂敷を持ったまま、

「兄さん、お久さんは家へ来ます。時間は極めておかないけれど。……」

「早業だなあ、町はずれだというのに、もう行って来たんですか、迅いこと、まるで女天狗だ。」

と口では言いつつ、八郎は自からその深切に頭を下げた。

「一人だけ……」

その黙って頷くのを視て、

「で、亭主は居なかったかね。」

「居ましたとも、居たって構やあしない。……逢いたくないものは逢いたくないんだから。」

「遣附けましたな、いや外交家だ。辣腕辣腕。」

と痩せた肩を突張りながら、

「他には、誰も……」

「その縁着いた娘さんが帰っていますよ。トラホームで弱ってるんですって。」

八郎はまた颯と眉を曇らせた。もっとも外へ出ると、もう、小川添の錦葉で晴れたが。

やがて公園の時雨となったのであった――

ところで……紅き、青き、また黄なる魚貝を手に手に、海豚が三頭、渋柿をぶら提げたような恰好で、傘の辻から紅屋の店へ入ったが、私は法然頭の老主人をはじめ、店に居る人たちの外に、別に、「いや、昨夜は――」