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らんとうばのてんにょ

卵塔場の天女

泉 鏡花

Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens

Aozora Bunko

「先生、あの、ちょっとお一口。」

「これはどうも、」

「お酌は拙ですよ。旦那が気が利かないから、下戸の処へ、おまけにただ匁の妓なんですから。」

と、お悦は直ぐまた台所へ。

お久という人は、やっとその火鉢の縁へ、鬱金の袖口を引張って、

「……思ったより、あんさんは若いこと。」

「うむ、何、いやどうも何だ、さっぱりだ。」

「一度お逢いした時から、もう二十四年か五年になりますね。」

「そうかなあ。……何しろ、何が何だか分が解らないんだからな、お互に。」

「いつも、ほんに、おたよりをしたいしたいと思っても、私は自分では手紙がかけず、震災のあった時なんかも、遠い北海道の果に居て、どれほどお案じした事やら、それでも、まあ、御無事でねえ。」

「わずかに命のあるばかりさ。」

「それでも、まあお互に息災で居れば、こうやって顔を見られますぞね。ほんとうに逢いとうてねえ、何年も何年も毎晩夢に見ぬ事はないのです。その夢にかって、はっきりした顔は分らんほど遠々しゅうて、……この春も、やっとお処が知れて、たよりをしたけれど……」

と、くいしばったような涙になる。

「いや、御不沙汰をしたよ、」

また顔にあてた袂をはずして、