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らんとうばのてんにょ
卵塔場の天女
泉 鏡花
Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens
いわんや、台所から盆を運んで、階子段の下まで来かかった結綿は、袖を刎ね、褄をはらりと乱して台所へ振向いた。
「あれえ、お勝手へ、野良猫が。」
谺を返したと見える。
雪代がちょっと襟を合わせながら、
「お母さんなのよ。――困るわね。」
「真に迫りましたよ。」
と私も言った。
「だって、兄さんが嗅ぐんだもの。」
「天人からはじまって、地獄、餓鬼、畜生だ。――浅間しさも浅間しい、が、人間何よりも餌食だね。私も餌食さえふんだんなら、何も畜生が歯を剥くように、建具屋の甥や、妹の娘の婿か、その蒔絵屋なんか罵しりやしない。謡も舞も、内に転がしといて見せも聞かせもしようがね。」
坐り直って、なぜか、八郎は憮然とした。
「――姉さん、ここに居る、この人が、」
八郎は片頬で妹を斜にさして、
「無心を云う警戒でもするようで浅間しいが、聞いて下さい。私たちは職業として、主要な収入高と言えば、その全体と言わないまでも八九分までは謡の弟子だよ。弟子を取るんだよ。客さきさえ良けりゃ、盆暮の附届けだけでも――云うことは下等だがね――一年はくらせよう。……はずんで、電話を呈しよう、稽古所を承ろう。