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らんとうばのてんにょ
卵塔場の天女
泉 鏡花
Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens
それも今しがたの事で。しかも、しかるに御在宿でない。しかるにしかる処、何が何とあろうとも明日の演能に、今夜までおいでのない法は断じてない、ただ捜せ、捜すと極めて、当地第一の料亭、某楼に、橘八郎先生歓迎の席を設けて、縉紳貴夫人、あまた、かつは主だったる有志はじめ、ワキツレ囃子方まで打揃い、最早着席罷在る次第――開会は五時と申すに、既に八時を過ぎました。幹事連の焦心苦慮偏に御賢察願いたい。辛うじて御当家、お内儀、御新造と連立って、公園から、もみじ見物――
という、そのお悦さんは、世話狂言の町家の女房という風で、暖簾を隔てに、細い格子に立って覗いている。
八郎は、框の冷い板敷に、ひたりと膝をついたが、そのいわゆる……餅屋は餅屋か、どこに用意をしていた知らん、扇子を帯にさしながら出迎えたのを、きちんと前に置いて、酒の勢で脱いでいたから、着流しのそげ腰で、見すぼらしく、土間に乗出すばかり手をついて、お辞儀をしている。
提灯は吹さらす風とともに、しきりに菊の霜に動いた。
――手繰しめて駆附け、顔を見てまず安心、――が、その安心をさせないで、八郎は――さような晴がましき席へは出つけませぬ、かくの通り食べ酔いまして、この上御酒宴の席へ連りましては、明日の勤のほどが――と誰も頼まない、酔ったのを枷にして、不参、欠席のことわり