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らんとうばのてんにょ
卵塔場の天女
泉 鏡花
Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens
「貴客方、ちょこッとその花を見て下さらんけ。……賞めて下さると、何じゃ、白いのを賞めて下されば、取次ぎの白粉じゃ、いろのを賞めて下されば、内の紅じゃ。一包ずつ、お景物をさしあげる事にいたしますぞ。」
ほたりと笑って、
「どやろか。」
と云った。
提灯の灯も黄に白に、菊見の客が帰ったあとで、皆が揃って座敷へ入った時、お久という人は、自分の椀小皿をきれいに食べて、箸を置いて、そうしてうしろ向きで膳の上を拝んでいた。
「御覧なさい……あの通りだ。――嘘も大袈裟も、もの好きにもしろ、お囃子方は宴会の席へ裃を持って出たかも知れないが、いま来た十人が十人、残らず申合わせたように四角な風呂敷づつみと折革鞄を持っていたでしょう。あの中が皆謡本さ、可恐い。……その他一同、十重二十重に取囲んで、ここを一つ、と節を突いて、浮かれて謡出すのさえあるんです。
その癖、明日になって、舞台で見たが可い。誰も、富士も三保の松も視めちゃあいない。気まぐれに、舞を見るものも、ごま点と首ッぴきだから、天人の顔は黒痘痕さ。」
八郎は恥ずるがごとく、雪代の羽織を引被った。
しかり。――十五の年渠を養子にした、当流の元老にして大家だった養父も正に同じ事を歎いたそうである。