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らんとうばのてんにょ

卵塔場の天女

泉 鏡花

Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens

Aozora Bunko

おなじような事がまたあった。盲目の景清である。「坊主今日も化けたか。」「化けた……何だか知らない、荒磯の小屋に小父さんが一人居て、――(目こそ闇けれど)……どうとかして――(寄する波も聞ゆるは)……と言うと、舞台中ざあと音がしてね、庵へ波がしらが立つのが見えた……魔法を使ったようだよ。」お婆さんの御新姐の手から冷酒を三杯立つづけて、袴に両手をついて、熟とうつむいた。が、渋苦い顔して、ほろほろと涙ぐんだ。「こいつを聞きたいばっかりに、俺は五十年苦しんだ。媼さん、驕れ、うんと馳走してくれ。皆一所に飲もう。」後日、内弟子に極める時元老が聞いた――「坊主、修業をして、舞台へ浪が出せるかな。」八郎が立処に、「いけなけりゃ、バケツに水を汲んで置いて打撒くよ。」

――「尋常に手桶とも言わないで、バケツはどうだ。しかし水を打ちまくかわりに、舞台へ雑巾を掛けます。」と、月を経て、嬉しそうに元老が吹聴した。娘の婿に極った時である。

かくて、八郎は橘の家を継いで、家名を恥かしめはしないのである。

人は呼んで、宗家同格と渠を称える。

「分らないな。――まだ世界に一人のあんさんだの、たった一人の妹を言っている! 一人の妹は分ったから、一人の妹になって来い。