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らんとうばのてんにょ
卵塔場の天女
泉 鏡花
Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens
」や、「師。」ではない、「職。」であろう。
東京では細君と二人ぐらしで――(私は謡や能で知己なのではない。)どうやらごく小人数の活計には困らないから、旅行をするのに一着外套を心得ていない事はない。
あの、ぼっと霧雨に包まれた山を背後に、向って、この辻へ入る時だ。……
「魚市へ入るのに、外套で、ぞろりは変だ。」
と往来で釦をはずすと――(いま買ものをするのを待つと云った)――この男の従姉だという、雪国の雪で育った、色の抜けるほど白い、すっきりとした世話女房、町で老舗の紅屋の内儀……お悦という御新姐が、
「段々降って来るのに――勝手になさい。」
留めるのかと思うと、脱がして、ざっと折って、黒地の縞お召の袖に引掛けて取った。
「先生――」
ついでだから言うが、学校の教師だから、私を先生と――云う、私も時々、先生と云う。同じ事で……その紅屋のを、八郎が、「姉さん」と云うと、「兄さん。」と云う。「お悦さん。」と云うと「八さん。」と云う。従って、年も同じだと聞く。
「先生は土地のお客人だ。着ていらっしゃい。同じに脱ぐなんて串戯です、いや串戯じゃない。」
どうも、剥身屋の荷をかばうと、その唐桟の袖が雨垂に濡れる。