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らんとうばのてんにょ

卵塔場の天女

泉 鏡花

Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens

Aozora Bunko

「はあ、いえ、それでございますがな。まあ、御新造さん、お掛けなすって。旦那もどうぞ。いらっしゃいましたよ、つい今しがた、前刻の旦那が。」

「来ましたって!」

と私の顔を見て、

「一人で?……もっとも一人でしょうけれど、どんな風俗をしていました。」

ぽんと、馬づらが煙管を払いた。

「ええ、それがな、紋着の着流しで、羽織も着ないで、足袋は穿いていなさったようでやすが、赤い鼻緒の草履を突掛けて……あの廊下などを穿きますな……何だか知りませんが、綺麗な大形の扇を帯に打込んで、せかせかおいでなさって、(持って行く。)と突如おっしゃる。勿論、お代済でございますし、しかし、お風呂敷か何か、と云うのに、(直きそこだ、直きそこだ。)と、いかさま……川端の料理屋ででも飲んでおいでなさったという御様子で、直ぐ、お引抱えになりますとな、可なり持ちおもりがするんでやすから、扇をつッ支棒にして。……いやどうも、花瓶も見事でございますが、どっちが綺麗かと思うほど、扇もお見事でございましたがな。」

といいいい、これも、怪訝そうに、じろりじろりと視る。……お悦がその姿で、……ここらでは今でも使う――角樽の、一升入を提げていたからである。