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らんとうばのてんにょ

卵塔場の天女

泉 鏡花

Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens

Aozora Bunko

松を透いて、小高く能楽堂の電燈が映すから、あのまま、潰れたのでも崩れたのでもない。が、雷か、地震か、爆発の前一秒を封じた魔の殿堂の趣して、楽園の石も且つ霜柱のごとく俤に立つのを後に、しばらくして、賑な通へ出た。

「少しここに隠れていましょう。」

落人の体である。その饂飩屋へ入った時は、さすがにお悦が「お水を、お水を。」と云った。そうして、立続けに煽って、はじめて酔ったように、……ぼっと血の色が顔に上ったのである。

「何にも言わないかわり、私は飲みますよ。」

「沢山めしあがれ、……あとで、また御馳走を。」

――電話で、旅宿を――それから呼出しだったが紅屋へ掛けた。八郎は勿論帰っていない。楽屋に居る筈はなかろう。居てもそこを訪ねる数ではないから。……再びお悦の導くままに。――

かくて、川通りの骨董屋へ来たのである。

果して八郎はここへ顕われたのであった。

微妙な霊感と云ってもいい。……ここへ見当を着けたお悦が、まだ驚いた事には、――紅屋で振舞った昨夜の酒を、八郎が地酒だ、と冷評したのを口惜がって、――地酒のしかも「剣」と銘のある芳醇なのを、途中で買って、それを角樽で下げていたのであるから。