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らんとうばのてんにょ
卵塔場の天女
泉 鏡花
Read 卵塔場の天女 (らんとうばのてんにょ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,251 characters · 94 screens
先生の肖顔だという風説があって、男振がいかにもいい。
――男振は論じない。私のこの場合がちょっとその趣に似ていた。困った了簡方の男で、そこでいい心地になって、石塔に肱をついて、塔婆の陰から覗いたうちに、真暗になったから、ハッと思うと、誰も居ない。――とろりとして夢を見たのであろうか。
寺の屋根も、この墓場も、ほとんどものの黒白を分たない。が、門の方の峰の森から、釣鐘堂の屋根に、霧を辷って来たような落葉の褥を敷いた、青い光明は、半輪の月である。
枯葎を手探りで、墓から迷って出たように、なお夢心地で、潜門を――何となく気咎めがして――密と出ると、覚えた路はただ一筋、穴の婆さんのあたりに提灯が一つある。
――来る時、この裏の藪を潜っても、同じ墓所へ行く、とお悦が言った。――ははあ搦手から出たかと思う、その提灯がほんのりと、半身の裾を映す……褄は彼の人よりも若く、しっとりと、霧に蔦もみじした紅の、内端に細さよ。
雪代であった。夢ではない。
「ああ、先生、母から自働電話で……(大急ぎでこっちへお迎いに。)……と云うものですから――すぐ自動車が間に合いましたの。