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たんていしょうせつのなぞ
探偵小説の「謎」
江戸川 乱歩
Read 探偵小説の「謎」 (たんていしょうせつのなぞ) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 119,820 characters · 235 screens
イギリスが世界一の探偵小説国といわれるのも、そういう古い伝統があるからだ。「バーナビイ・ラッジ」は純探偵小説ではないが、ディケンズが死ぬ前に書きはじめて、未完成のままに終っている長篇「エドウィン・ドルード」は純探偵小説といってよいもので、この小説の犯人は誰か、どんなトリックを用いたのかということは、ディケンズの死の直後から現在にいたるまで、いろいろな作家によって、くりかえし論議せられ、「エドウィン・ドルード」の解決篇というものが、二十種以上も発表されているほどである。
では「顔のない死体」のトリックを使ったのはディケンズが最初かというと、決してそうではない。そうではないことは分かっているのだが、しかし誰がどこで使ったかという具体的な資料を、私はまだ探し出せないでいる。それにもかかわらず、ディケンズが元祖でないと断言するのには理由のあることで、十九世紀から、一と飛びに紀元前にさかのぼると、そこに歴然とこのトリックが使われているからである。紀元前から十九世紀まで空白であったはずはない。探せばあるに違いないのだが、私などは十八世紀以前の文学となると、きわめて縁遠く、渉猟の力も機会もないので、しばらく諦めているというにすぎない。