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たんていしょうせつのなぞ
探偵小説の「謎」
江戸川 乱歩
Read 探偵小説の「謎」 (たんていしょうせつのなぞ) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 119,820 characters · 235 screens
毒氷
彼はあらかじめ魔法壜を風呂の中へ持ちこむ習慣をつけ、多くの人に見せびらかしておいた。蒸し風呂では、ひどくのどがかわくので、冷いお茶を入れておいて、時々飲むためという口実である。したがって、名探偵のほかは誰もこの魔法壜を疑うものはなかった。
普通の部屋なれば、大きな氷片が溶けるのに時間を要するけれど、蒸し風呂の熱気の中では、それが非常に早く、また、氷の溶けた水も、蒸気の滴りにまじって、少しも痕跡を残さない。そういうふうに、あらゆる好条件のそろっている蒸し風呂と、氷剣トリックとを結びつけたところに、この小説の妙味があるわけである。これに似た着想に、寒国の事件で、大きなツララを兇器にして、人を殺す話を書いた作家もある。
毒氷
カーター・ディクスンの長篇探偵小説に、こういうのがある。電気冷蔵庫の、小さい仕切りのある製氷函の中に毒物を注入し、凍らせておいて、カクテルを作るさい、これを取り出し、相手の目の前でシェーカーの中に入れ、自分が一と口飲んで見せる。その時は毒氷がまだとけていないので何事も起らない。話にまぎらせてしばらく時間を費し、シェーカーの中の毒氷が全くとけた頃に、グラスについで相手にのませる。