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たんていしょうせつのなぞ
探偵小説の「謎」
江戸川 乱歩
Read 探偵小説の「謎」 (たんていしょうせつのなぞ) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 119,820 characters · 235 screens
に詳説したので、ここには繰り返さない。氷のほかの最も奇抜な兇器では、「太陽と水瓶の殺人」というのがある。これもしばしば書いているので、省くことにする。
私が西洋探偵小説から採集した異様な兇器の例は六十余りあるが、小説としては面白くても、その方法だけを摘記したのでは、さしたることもないようなものが多い。その中からなるべく奇抜なものを拾い出してみると、探偵小説を読み慣れた人には珍らしくないのだが、「加速度による殺人」というのがある。ある男が鉄兜を割られ、頭蓋骨をくだかれて道のまん中で死んでいる。そばに小さな金槌が一つ落ちている。そんな金槌で鉄兜を割るのは、人間の何倍もあるような巨人でなくてはできないことである。一見不可能の殺人となる。真相は、そこに聳えている高い塔の上から金槌を投げたのであった。小さな金槌でも加速度がつくと、非常な力を持つ、つまり加速度の殺人であったというわけ。
動物を兇器として利用するトリックにも、いろいろ面白いのがある。ある小説では、棒の先に、獅子の爪とそっくりの金具をとりつけて、殴打殺人する。附近に獅子などのいない場所で、獅子の爪痕で殺されているのだから、一種怪談めいた恐怖を感じさせるのである。