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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
当り前です。はしなくも竜造寺長門守が口にしたその護持院隆光とは、怪しき修法を以て当上様綱吉公をたぶらかし奉っている妖僧だったからです。由なき理由を申し立てて、生類憐れみの令を施行したのもその護持院隆光だったからです。――退屈男の口辺には自ずと微笑がほころびました。
「意外じゃ! 意外じゃ、実に意外じゃ。いやさすがは長門守どの、狙う対手がお違い申すわい、それにしても――」
「何じゃ」
「隆光はいかにも棄ておき難い奴でござる。なれども、これを亡き者と致すにかような怪しきカラクリ設けるには及びますまいぞ。何とてこのような道場構えられた」
「知れたこと、悪僧ながら彼奴は大僧正の位ある奴じゃ。ましてや上様御祈願所を支配致す権柄者じゃ。只の手段を以てはなかなかに討ち取ることもならぬゆえ、この二十五日、当道場地鎮祭にかこつけて彼奴を招きよせ、闇から闇に葬る所存じゃわ。その手筈大方もう整うたゆえ、今宵この通り前祝いさせたのじゃ」
「ウフフ。あはは! 竜造寺どの、お身も愈々耄碌召さった喃」
「なにッ。笑うとは何じゃ。秘密あかした上からは、早乙女主水之介とて容赦せぬ。出様次第によってはこのまま生かして帰しませぬぞ」