Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
そのうえに見物の目もある。手前もある。
「やれッ。やれッ。構わぬわッ、斬れ斬れッ」
「打ッた斬って吠え面掻かしてやれッ」
半分は脅すつもりもあったらしく、黒鞘の大刀を横にヒネってプツリ鯉口切ったところを、
「こりゃ下郎々々…」
気味わるく静かにうしろから呼びかけて、のっそりと主水之介がその顔の真ん前へ立ちはだかると、あとは無言でした。黙ってにんめり打ち笑みながら、ぬうと向うの顔へこっちの顔をさしつけて、みい、みい、これを見い、というようにおのが指でおのが額の大看板を静かに指さしたものです。
ぎょッとなってたじろいだところを、
「出口はあちらじゃ。行けッ」
「………」
「行かぬかッ。行かねば光るぞッ」
睨んだ傷は江戸御免、しいんと見すくめたひと睨みに、たじ、たじとなりながら六人がさがりかけたのを見眺めて、怒気もろとも泳ぐように主水之介の前へ飛び出して来たのは腰本治右衛門でした。黒鍬者といえば土工です。千石の大身に成り上がっても、もとの素姓はなかなか洗い切れぬとみえて、言葉のところどころが巻舌がかってもつれました。
「誰に頼まれて要らざる真似をしやがるんじゃ。うぬは何者という野郎じゃ」