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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
「その方、もぐりじゃな」
「なにッ。もぐりとは何じゃ! 怪しからぬことを申しやがって、もぐりとは何が何じゃ!」
「申しやがると申しおったのう。江戸に住まって、この眉間傷知らぬような奴は、もぐりじゃと申すのよ。その方も仲間ならば、出口はあちらじゃ。行けッ」
「た、たわけ申すなッ。鶉ひと桝小判で買って参ったのじゃ。うぬのさし図うけんわい!」
「控えろッ。この小屋は喧嘩場でない。見物が迷惑するゆえ、表へ出いと言うのじゃ。参らねばこれなる眉間傷が今に鼠啼きいたすぞッ。――行けい! 道が分らねば手伝うてやる! 早う行けい!」
青白く光らして、柄頭ぐいとこきあげながらその胸元へ突きつけると、もうどうしようもない。腕には諸羽流の術がある。柄頭ながらそのひと突きは大身槍の穂尖にもまさるのです。腰本治右衛門の顔が盃んだかとみるまに、六人の小侍ともども、ぐいぐいと押されて木戸口から表へ消えました。
わッと小屋の中は総立の大どよめき。
「兄さん! 兄さん! あれが早乙女の御前さまじゃ。お救い願えてようござりましたな。早う肌をお入れなんし……」
打ちよろこびながら小芳が手伝って十五郎の肌をおさめさせたところへ、木戸からずいずい主水之介が戻って来ると、裁きに手落ちがない。