Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Read 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 346,393 characters · 692 screens
「それじゃ使いを出そうか。」
笹村はそこに突っ立っていながら、押し出すような声音で言った。
「そうですね。知れるでしょうか。……それよりかあなたお鳥目が……。」と、お銀は笹村の顔を見上げた。
「私拵えに行こうと、そう思っていたんですけれど、まだこんなに急じゃないと思って……。」
笹村は、不安そうに部屋をそっちこっち動いていた。無事にこの一ト夜が経過するかどうかが気遣われた。稚い時分から、始終劣敗の地位に虐げられて来た、すべての点に不完全の自分の生立ちが、まざまざと胸に浮んだ。それより一層退化されてこの世へ出て来る、赤子のことを考えるのも厭であった。
お銀も、子供の話が出るたびに、よくそれを言い言いした。
「どんな子が産れるでしょうね。私あまり悪い子は産みたくない。」
「瓜の蔓に茄子はならない。だけど、どうせ、育てるんじゃないんだから。」笹村も言っていた。
お銀はひとしきり苦々していた腹の痛みも薄らいで来ると、自分に起ってランプを点したり、膳拵えをしたりした。
「何だか私、このお産は重いような気がして……。」
飯を食べていたお銀はしばらくするとまた箸を措いて体を屈めた。