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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Read 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 346,393 characters · 692 screens
仮に別居しているうちに、結婚を発表するに適当な時機を見つけようとも考えていた。
「ばかばかしい、こんなことをしていては、やはり駄目ですよ。いつまで経っても、道具一つ買うことも出来やしない。」
お銀は下宿の帳面を見ながら、時々呟いていた。
通りかかりに見つけたその家のことをお銀の口から聞くと、笹村は急いで見に行った。
家は人通りの少い崖と崖との中腹のような地面にあった。腐りかけた門のあたりは、二、三本繁った桐の枝葉が暗かったが、門内には鋪石など布かって、建物は往来からはかなり奥の方にあった。三方にある廃れた庭には、夏草が繁って、家も勝手の方は古い板戸が破れていたり、根太板が凹んでいたりした。けれど庭木の多い前庭に臨んだ部屋は、一区画離れたような建て方で、落着きがよかった。
笹村はじきに取り決めて帰ったが、何の用意もなしにそう早急に移って行くことは、お銀にはあまり好ましくなかった。いよいよ住むとなると、廃れたようなその家にも不足があった。
「もっとどうとかいう家がないものですかね。井戸が坂の下にあるんじゃしようがないわ。」
お銀は笹村から家の様子を詳しく聞くと進まぬらしい顔をした。