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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Read 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 346,393 characters · 692 screens
お銀も褥のうえに起きあがって、蠢動く産児を見てにっこりしていた。
「いいですよ。こんな児がかえってよくなるものですよ。」
お銀は自信がありそうに言った。
老人のような皺を目のあたりによせて、赤子は泣面をかいた。胴の長い痩せぽッちなその骨格と、狭い額際との父親そっくりであるほか、この子が母親の父方の顔容を受け継いでいることは、笹村にとってかえって一種の安易であった。
縁側を電車を引っ張って歩いていた正一も、側へ寄って来ると、赤子と一緒に苦痛らしい顔を顰めた。そして、「おッぱいやれ……。」と、母親に促した。
「どうも有難うございました。」
少しは力の恢復して来たお銀が、捲き髪姿で裏から入って来たとき、笹村の顔色がまだ嶮しかった。笹村はその時、台所へ出て七輪の火を起して、昼のお菜を煮ていたが、甥も側に働いていた。昼過ぎから学校へ通っている甥が出かけて行った後は、笹村は毎日独りで静かな家のなかに臥たり起きたりしていた。時々母親が来て、飯を運んだり、台所を見たりするのであったが、笹村はそのたんびにあまりいい顔を見せなかった。こうして面倒を見たり見られたりしながら、親たちや弟に幅を利かせようとしているらしいお銀の心持が、哀れでもあり苦々しくもあった。