Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Read 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 346,393 characters · 692 screens
机の上には来た時のままの紙や本が散らばっていて、澱んだような電気の明りに、夏虫が羽音を立てていた。
その晩笹村は下の炉傍へ来て、酒をつけてもらったりした。炉傍には、時々話し相手にする町の大きな精米場の持ち主も来て坐っていた。
翌朝九時ごろに、階下へ顔を洗いに行った時、笹村はふと料理場から顔を出す女の姿を見た。薄い鬢を引っ詰めたその顔は、昨夜見た時よりも荒れて蒼白かった。顳のところに貼った膏薬も気味が悪かった。
「旦那、ほんとに日光へ連れて行って下さいね。」
女の口には金歯が光った。声もしゃがれたようであった。女は昨夜の挨拶にそこへ来ているのであった。
午後に笹村は、長く壁にかかっていた洋服を着込んで、ふいとステーションへ独りで出向いて行った。そしてちょうど西那須行きの汽車に間に合った。