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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Read 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 346,393 characters · 692 screens
「何だい、またやっているのかい。」
音を聞きつけて、二階から中学出の子息が降りて来た。そして母親の横へ坐って、加勢の目を見張っていた。
お増はむやみと起が利いた。
「駄目だい阿母さん、そんなぼんやりした引き方していちゃ。」
お増は黙って附き合っていたが、じきに切り揚げて帰った。そして家へ帰ると、わけもなく独りで泣いていた。
四
とろとろと微睡むかと思うと、お増はふと姦しい隣の婆さんの声に脅かされて目がさめた。お増は疲れた頭脳に、始終何かとりとめのない夢ばかり見ていた。その夢のなかには、片々のいろいろのものが、混交に織り込まれてあった。どうしたのか、二、三日顔を見せない浅井の、自分のところへ通って来たころの洋服姿が見えたり、ほかの女と一緒に居並んでいる店頭の薄暗いなかを、馴染みであった日本橋の方の帽子問屋の番頭が、知らん顔をして通って行ったりした。お増はそれを呼び返そうとしたけれど、誰かの大きな手で胸を圧えつけられているようで、声が出なかった。
廊下で喧嘩をしている、尖がった新造の声かと思って、目がさめると、それが隣りの婆さんであった。そこへ後添いに来たとか聞いている婆さんは、例の禿頭の爺さんを口汚くやり込めているのであった。