Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
Read 浅草風土記 (あさくさふどき) by 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,294 characters · 318 screens
この栄ちゃんという子、一人っ子の上に、体があんまり丈夫でないので、それにうちで大切にしていました。――紫いろのメリンスの帯を叮嚀にしめて、前だれをかけて、みるから秘蔵っ子らしい恰好をしていました。
が、そのうち、田原町切ってのものもちで、奉公人も大ぜいつかっていましたが、おそろしく、堅い、古風なうちで、栄ちゃんは、小川学校の課程をすませると、すぐ、見世に出てじみちな商売のほうをやらせられました。
しかし、その、商売のほうといっても、栄ちゃんは、若旦那としての取扱いをうけたのではなく、兵隊検査までは、奉公人のなかに入って、奉公人と同じ修行をさせられるのでした。寝るから起きるまで奉公人と一しょ。――ということは、夜、おくの人たちがひけてから木綿蒲団にくるまって見世に寝て、朝は、おくの人たちより早く起きるのです。三度の食事も外の奉公人と一しょに台所で食べるのでした。
拭掃除は勿論のこと、糊入一枚、水引一本の使でも、栄ちゃんに云いつけるという風でした。
で、たまには、無理な小言もいわれるのでしょうが、でも、栄ちゃんは、素直にいまでも働いています。
お父さんは仕方がないとしても、しかし、おっ母さんの方がよく、それで、黙っていると思います。