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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
Read 浅草風土記 (あさくさふどき) by 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,294 characters · 318 screens
三
――「梅園」の横町については嘗てそこに「凧や」のあったことを覚えている。よく晴れた師走の空がいまでもわたしにその往来の霜柱をおもわせるのである。――どこもともにけしきは「冬」である。
で、「万屋」の横町は……
……道草をくってはいけない、わたしはいま学校へ行く途中である。
三
角、「たつみ食堂」と称するもののいまあるところに「梅園館」という勧工場があった。――そこを「仲見世」へ出たわたしは、そのまま左へ仁王門のほうへ道をとった。その時分からあったのがいまの「大増」の手まえを木深く奥へ入った「大橋写真館」である。「大増」のところには、その時分、浅草五けん茶屋の一つにかぞえられた「万梅」があった。……とだけでは何のこともない、いまも立ちならぶ大きなあの榎のかげに、手堅い、つつましい、謙遜な、いえばおのずからそれが江戸まえの、ぬばたまのくろ塀をめぐらしたその表構えが「古い浅草」のみやびと落ちつきとをみせていた。そこの石だたみだけつねにしぐれている感じだった。――ことにはそこに、その榎の下に、いつも秋早くから焼栗の定見世の出ることが、虧けそめた月の、夜長、夜寒のおもいを一層ふかからしめた。