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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
Read 浅草風土記 (あさくさふどき) by 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,294 characters · 318 screens
四
生締のスッポリ、紅で眼張を濃く入れ、紫の鉢巻を顔の横へぶら下げたゆかりの江戸桜の助六である。下手の浄瑠璃台にならんだ、白えりの音楽師たちはすぐうたいだした。蝙蝠が出て来た浜の夕すずみ、川風さっと福牡丹。……もちろん助六はすぐそれにのって踊り出した。
われわれは烟に巻かれた。が、すぐ番組がそれを教えてくれた。
新案煙草落し……
客がバットをうったので、それでそういう魔性のものが現われたのである。……現われてすなわち蝙蝠を踊ったのである……
助六が消えると上手横の床几にかけた二三人の客の一人は、やおら鉄砲をとり上げて今度はほまれをねらった。
ドロ、ドロ、ドロとまた太鼓の音……
四五人の水兵服を着た少女がすぐ駈けだして出て来た。そうしてすぐピアノの音につれて快活にくるくる踊りはじめた。
なぜそれがほまれか?――ほまれ、ほまれ、国のほまれである。
その少女群が消えると、客の一人はすぐ又鉄砲をとり上げた。そうして今度は胡蝶をねらった。
太鼓の音とともにあらわれたのは獅子である。
浄瑠璃台の音楽師たちはたちまち弾き出しうたい出した。
常磐津「勢獅子」。――獅子の狂いにさしそう蝶の影である。