Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
Read 浅草風土記 (あさくさふどき) by 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,294 characters · 318 screens
そして両側の、茂り交した柳の木末に早くも、「夕暮」は下りた。……ということは、蝙蝠がとんで、水のように澄んだ空に、早くも星の瞬きが生れた。
そのときである。すしやの屋台、天麩羅やの屋台、おでんやの屋台。……夜店へ出るそれぞれの屋台が誓願寺の地中から、一トしきりそこにつづいた。……たとえば泊りへいそぐそれぞれの船のように……
が、そのくせ、どこにもまだ燈火のかげはさしていない。
――あさァり……からァさり……
で、どこからともなく聞えて来る、夕とどろきのなかのその美音……
――大丈夫だ、この塩梅なら……
――もつよ、まだ、この天気は……
屋台のぬしは、それぞれの車を押しながら、おりおりそうしたことを言葉ずくなにいい合った。
蝙蝠。……夕あかり。……星。……そして夜店……
電車の行交いもいまのように激しくなかった。人通りも、また、いまのように目まぐるしくなかった。そのまま白くその一日はしずんだ。……というものが浅草の広小路。……二十年まえの、わたしの育ったころの浅草の広小路。……どこのうちでもまだ瓦斯をつけていたそのころのけしきの一部である。
その懐しいおもいでの、そうした屋台のぬしのなかから、何間間口かの、大ぜいの奉公人をつかい、いまを時めく公園界隈でのすしやに経上ったものもあれば、いまなお屋台の、色の褪め