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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
Read 浅草風土記 (あさくさふどき) by 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,294 characters · 318 screens
でゆくりなくわたしは邂逅ったりした。
「行こう、じゃァ、大金へ」
二人にこたえてわざとわたしはいった。――というのは、もとのそのうちといかなる関係をもつうちか知らない、おなじ「大金亭」という家名の、もとのうちで調理したとおなじ種類のものばかり調理するうちの、富士横町の裏通りに出来たことをわたしはおもい出したから……
が、それ以上わたしは説明する必要はなかった。だれもその存在だけは聞いて知っていた。そうしてわたしたちの気紛れはすぐその「金田」説をそのうちに搗替えた。すなわちわたしたちは、それと一しょに、いまはただわずかにそこの交番の名乗にだけ名残をとどめている「小松橋」を象潟町のほうへ急にまた左折した。――うッかりしている間に雲はすっかり切れ、さえざえとあかるい月の光は水のように空に満ちていた。わたしは喜んだ。なぜなら熊手はもたなくっても、唐の芋は下げなくっても、黄金餅は買って来なくっても、それによって、その冷え冷えとした「月夜」をえたことによって「酉の市の帰り」という心もちをはッきり自分に肯うことが出来たから……。「年の市」の雪に対して、「酉の市」