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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Read 火の扉 (ひのとびら) by 岸田 国士 (きしだくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,467 characters · 257 screens
昔の友人が、いつしよにどうだつていうわけです。兵隊上りの失業者にはもつてこいの仕事でして……」
「海軍ならわかるけど……」
「ところが、今度の戦争では、海軍の陸戦隊の向うを張つて、陸軍の軍艦つていうものをこさえましたからねえ」
「それで、お仕事は、好調なの?」
「まあ/\つていうところです。なにしろ、船一そうがもとでで、まだ雪のなかへバラックを建てたところなんですから……。あ、そんなことより、大佐殿のことは、実になんとも申しあげようがありません。奥さんにあれだけのことを伺つていながら、どうにもしようがありませんでした。面目ない次第ですが、もうあれだけの決心をされている以上、だれがどう言つても歯がたゝんでしよう。相変らずの鋭い頭で、ぴし/\やられるんですから、こつちが突つ込むすきがないんです。新聞にはくわしいことは出ていませんでしたが、島大尉から当時の様子をこま/″\と知らせてよこしました。大佐殿らしい、ご最期だと思いました。しかし、惜しいですなあ。あの頭脳をこれからの日本が失うことは……」
彼は、ひと息にしやべつて、急にあたりを見まわした。その様子を察して、彼女は言つた――