Japanese reading practice

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Read 火の扉 (ひのとびら) by 岸田 国士 (きしだくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,467 characters · 257 screens

Aozora Bunko

と、あとは苦笑でまぎらしてしまつた。

北原ミユキも、その述懐の率直さについ引きこまれ、

「今だつて、まだそう思つてる男がいるわ。野ばんつていえば、わたし、意地わるも一種の野ばんだと思うわ。人をいじめてよろこぶ癖ですもの。精神的な残ぎやく行為だわ」

「嗜ぎやく性というやつだね。いつたいに、日本人は、つまらんところでちよつと意地わるをしてみる癖があるね。変態心理というほどでもあるまいが、これもどうやら習性みたいなもんだ。だから、自分のことはわからない。人のことだけはよくわかる。実にへんなもんだ」

「バスの切符売場で、おゝぜいの人が急いでるのに、わざとゆつくりおつりを数えたり、仲間としやべりたくもない口を利いたりしてるの、わたし、くやしくつて……」

「そんなこと数えあげたらきりはないさ。母親が赤ん坊に意地わるをすることさえあるんだもの」

「それはヒステリーよ」

「そうさ、日本人はおゝかたヒステリーなのさ」

「野ばん人にヒステリーつてあるかしら」

「さあ、そいつは知らん。しかし、ヒステリーは野ばんに近いよ。人間らしくなくなるつていう意味でね。だつてさ、わしはサイゴンではじめて聞いたんだが、フランス人は、極端なはにかみ屋のことを、野ばん人つていうんだぜ」